スポーツをしていると、いろいろな場面で勝ったり負けたり、選ばれたり選ばれなかったりすることがあります。それがスポーツの特徴です。ちょっとしたセレクションで選ばれるとあたかも将来が全て保障されたように思うのは大きな勘違いです。親や指導者ばかりでなく、場合によってはメディア
までが過剰に反応し大騒ぎをしてしまうケースがあります。そのことが子どもにとって大きなプレッシャーになりえます。またその反対に、その周囲で「うちの子には 見込みがない」と見切りをつけて、さっさとサッカーをやめさせて他 のことを始めさせるような極端な対応を
するケースもあります。自分の子どもがどうなのか、見込みがあるのかないのか、気になる気持ちは当然です。また早く確実な道をつくってあげたい、という親心もあるかもしれません。実際のところは、大人が早く安心したいのかもしれません。しかし、低い年齢であれば、その先の可能性は不確定。早いうちには何も決めつけることなど決してできません。
それを大人が勝手に見切ってやめさせてしまうなんて、無茶なことではありませんか? やるのは子ども。主役は子ども。大人が決めつけることではありません。 また、低い年代のうちには、可能性のある子どもは実にたくさんいます。そのような子どもたちに良い指導や良い環境を与えたいと考えています。だから、私たちは小学校年代までは、なるべく多くの子どもたちに良い環境を与えることを考えています。
トップにいくかいかないかだけが価値ではありません。 子ども自身がサッカーをしたいという純粋な気持ちがいちばん大切であり、そこには実にいろいろな価値があります。一喜一憂しないで、ゆっくり見守りましょう。私たちは子どもたちがサッカーを楽しみ、生涯にわたってサッカーを好きでいてくれることを望んでいるのです。
サッカーの試合に行くと、よく見かける光景があります。 試合場でのチームの場所取り、飲み物も着替えも、何から何まで親が準備。子どもはただ単に用意されたものを飲み、言われるままに着替えるだけです。いつも必ずそろっているから、「ありがとう」 とさえ言わない選手もいます。
お手伝いいただくのはたいへんありがたいことです。でも多くは子どもたち自身で十分にできること。あるいは、子どもたち自身がしたほうがいい、する必要があるとわかることです。むしろ、子どもなりに、必要なことは自分で必要だと思って、自分でやるということこそ大事。 足りなかったり不便だったりしたら、自分で考えて、工夫したり相談したりで 何とかする。そして次にはそうならないようにすることが大切です。
私たちは、サッカーでは自立が大切であると考え、自立した選手を育成しようとしています。自立しているというのは、 自分自身で判断して責任をもって行動するということです。 誰かにやれと言われたからではなく、自分自身がやりたい、やったほうがいいと思うからやる。 失敗も自分の判断によるもの。誰かのせいにはできません。
また、何から何まで大人がそろえてくれる環境に子どもたちが「あって当然」と思うことは間違いです。 用意してもらえない環境では何もできない、適応できない子どもになってしまうでしょう。 何から何まで常に用意されている環境を与えることがマイナスとなることもあるのです。 サッカーの試合に集合したときに、すねあてを忘れてきてしまった子
がいました。その子に聞くと、いつも自分ではなく母親が用意をしているので自分のせいではない、とのこと。親が電話をしてきて、届けに来ると言います。 試合の時間には間に合わないためにお断りしました。その後、その子は決して忘れ物 をしないようになりました。お母さんに よると、それ以来必ず自分自身で用意 をするようになったとのことでした。